Pop Smoke(本名:Bashar Barakah Jackson)1999年7月20日生まれ
ニューヨークのブルックリンで生まれ育ち、2019年にリリースしたシングル『Welcome to the Party』と『Dior』で一躍有名になった。UKのドリル・アーティストやプロデューサーとコラボレーションすることが多く、ブルックリン・ドリルの確立に貢献した。
2019年4月、レコード・プロデューサーのRico BeatsはPop SmokeをSteven Victorに紹介し、Victor Victor Worldwide and Republic Recordsとレコーディング契約を結ぶ。
2019年7月、デビュー・ミックステープ『Meet the Woo』をリリース。2作目のミックステープ『Meet the Woo 2』は2020年2月7日にリリースされ、ビルボード200で初登場7位を記録し、ラッパーとして初の全米トップ10入りプロジェクトとなった。
『Meet the Woo 2』のリリースから12日後、ポップ・スモークがロサンゼルスで住居侵入により殺害された。50 Centは遺作となったデビュー・スタジオ・アルバム『Shoot for the Stars, Aim for the Moon』のエグゼクティブ・プロデューサーを務め、2020年7月3日にリリースされた。このアルバムはビルボード200で初登場1位を獲得し、アルバム収録の19曲すべてがビルボードホット100にチャートインした。
50セントのファンであることを公言していたポップ・スモーク
アメリカのラジオ番組Real 92.3 LAのインタビューで、影響を受けた人物として、50セント、DMX、Meek Millを挙げていた。1999年生まれのポップ・スモークは2000年代のヒップホップシーンを席巻していた、同じくニューヨーク出身の50セントにリスペクトを表していた。
「俺は50が好きだよ。嘘はつかない。50を聞いて育った。50 Centの従兄弟なんじゃないか?って言ってくるヤツもいるぐらいさ。」
Pop Smoke talks New York Rap Scene, No Features on Album + More | Bootleg Kev & DJ Hed
Best Rap Video
賞を受賞した(右)50セント。(左)エミネムもステージに上がった2003年2月にリリースされた50セントのデビュー・スタジオアルバム『Get Rich or Die Tryin’』はヒップホップシーンで最も売れたアルバムのひとつとなった。2003年の終わりまでにRIAAプラチナ×6を獲得。ヒップホップのメインストリームをストリート・ラップへと方向転換させ、2枚のNo.1シングル(『In da Club』と『21 Questions』)を生み出した。
ポップ・スモーク、50セントのヒット曲からインスピレーションを得ていた
50セントのファンであることを公言していたポップ・スモークは、憧れのラッパーのヒットソングから詩を引用し、リスペクトを示していた。『Got It on Me』にて『Many Men (Wish Death)』の詩が引用されていると話題になったが、ポップ・スモークが50セントの曲からインスピレーションを得た最初の曲ではない。
Christopher Walking
『Christopher Walking』は、ポップ・スモークの2作目のミックステープ『Meet The Woo 2』からのファースト・シングル。この曲は、1990年の犯罪映画『キング・オブ・ニューヨーク』に登場するChristopher Walkenが演じるFrank Whiteを自分に例えている。
『Christopher Walking』は、2005年にリリースされた50セントのヒットソング『Window Shopper』からインスピレーションを受けた曲である。Verse 1の終盤に『Window Shopper』を引用したラインがある。
I ain’t no window shopper, your man out here window shoppin’ (Yeah)
“Christopher Walking”,Produced By Dez Wright, WondaGurl & CashMoneyAP,Written By Chrishan, Hitmaka, Derrick Milano, WondaGurl, Dez Wright, CashMoneyAP & Pop Smoke,Release Date January 15, 2020
俺はウィンドウショッパーなんかじゃないぜ、お前の男はウィンドウショッピングをしてる
I be in all the stores, and no, we ain’t window shoppin’ (Woo)
俺はいろんな店に行くが、いいか、俺達はウィンドウショッピングなんてしない
ウィンドウ・ショッパーとは、高価な店を見て回るが、買えないので何も買わない人のこと。
Hotel Lobby
『Hotel Lobby』は、ポップ・スモークの遺作アルバム『Shoot for the Stars Aim for the Moon』のデラックス・エディションに収録されている。2003年9月にリリースされた50セントのシングル『If I Can’t』のコーラスを引用している。
[Post-Chorus]
“Hotel Lobby”,Produced By Banshee The Great, Keanu Beats, Jess Jackson & 808 Melo,Written ByKeanu Beats, Banshee The Great, Ron “Neff-U” Feemster, Mike Elizondo, Jess Jackson, Dr. Dre, 50 Cent, 808 Melo & Pop Smoke,Release Date July 20, 2020
If I can’t do it, homie, it can’t be done
もし俺が出来なくても、ホーミ―、そんなことはない
I’ma let the champagne bottle pop
シャンパンのボトルを開けるぜ
I’ma take it to the top
俺はトップに躍り出る
Show you how my niggas rock
俺達のロックを見せてやる
092
[Chorus: 50 Cent]
“If I Can’t”,Produced By Dr. Dre & Mike Elizondo,Written By 50 Cent, Dr. Dre, Mike Elizondo & Ron “Neff-U” Feemster,Release Date September 16, 2003
If I can’t do it, homie It can’t be done
もし俺が出来なくても、ホーミ―、そんなことはない
Now, I’ma let the champagne bottle pop
今、シャンパンのボトルを開けるぜ
I’ma take it to the top
俺はトップに躍り出る
For sure, I’ma make it hot, baby (Baby)
間違いなく、俺がホットにしてやるよ、ベイビー
Got It on Me
『Got It On Me』は、ポップ・スモークが恐怖の中で常に生きており、自己保護のために武器を所持しなければならない厳しい現実を表現し、ポップ・スモークの死を望む多くのヤツ(Many Men)がいることを示唆している。
[Chorus]
“Got It on Me”,Produced By Young Devante,Written By Freddie Perren, Keni St. Lewis, Young Devante, 50 Cent, Darrell “Digga” Branch, Luis Resto & Pop Smoke,Release Date July 3, 2020
Have mercy on me, have mercy on my soul
俺に憐れみを、俺の魂に憐れみを
Don’t let my heart turn cold
俺の心を冷めさせないで
Have mercy on me, have mercy on my soul
俺に憐れみを、俺の魂に憐れみを
Don’t let my heart turn cold
俺の心を冷めさせないで
Have mercy on—
憐れみを
Many men
多くのヤツに
Many, many, many, many men
多くのヤツが
Wish death ‘pon me
俺の死を望んでる
Yeah, I don’t cry no mo’
もう泣きはしない
I don’t look to the sky no mo’
もう空を見上げたりしない
‘Cause I got it on me
俺は手に入れたんだ
I got it on me
俺は手に入れた
I got it on me
俺は手に入れた
You can run up if you want (Fuck is you talking ‘bout?)
かかってきてもいいんだぞ
50セントが2003年5月にリリースした『Many Men (Wish Death)』をサンプリング、引用している。
[Chorus: 50 Cent]
“Many Men (Wish Death)”,Produced By Darrell “Digga” Branch, Eminem & Luis Resto,Written By 50 Cent, Darrell “Digga” Branch, Freddie Perren, Keni St. Lewis & Luis Resto,Release Date May 6, 2003
Many men
多くのヤツが
Many, many, many, many men
多くのヤツが
Wish death ‘pon me
俺の死を望んでる
Lord, I don’t cry no more
もう泣きはしない
Don’t look to the sky no more
もう空を見上げたりしない
Have mercy on me
俺に憐れみを
Have mercy on my soul
俺の魂に憐れみを
Somewhere my heart turned cold
どこかで俺の魂が冷めてしまった
Have mercy on many men
多くのヤツらに憐れみを
Many, many, many, many men
多くのヤツが
Wish death ‘pon me
俺の死を望んでる
The Woo
The Wooとは、ポップ・スモークの地元ニューヨークのブルックリンを拠点としたギャングの名称である。”Woo “というリフレインを流行らせ、威勢がよく贅沢なライフスタイルを意味するようになった。ポップ・スモークは代名詞として”Woo”と呼ばれ、この自慢げな歌は、彼のライフスタイルに魅力を感じ一緒になりたがる女性たちのことを歌っている。
50セントが2005年にリリースしたヒット曲『Candy Shop』、The Gameのヒット曲に50セントがゲスト参加した曲『Hate It or Love It』について言及している。
Let me take you to the candy shop (Candy shop)
“The Woo”Featuring 50 Cent & Roddy Ricch,Produced By Jess Jackson, Ray Lennon, DJ Drewski, K-Mack, Billy J (producer), Jer-Z, JW Lucas, Rxcksta & 808 Melo,Written By K-Mack, Steven Victor, DJ Drewski, Jess Jackson, 50 Cent, Roddy Ricch, Pop Smoke & Lil Tjay,Release Date July 3, 2020
キャンディショップに連れていこう
Show you all I got (All I got, all I got)
手に入れた全てを見せてやる
I put diamonds on your chain (Chain, uh)
チェーンにダイアモンドをつけてやる
To match your diamond ring (Uh, uh, uh)
キミのダイアモンドリングに合うように
I’m 092, nigga, Woo (Woo, back)
俺は092(ギャング)なんだ
Hate it or love it (Uh, uh), it’s me and you (Woo)
嫌いでも好きでも、それが俺とキミさ
ポップ・スモーク、50セントと初対面を果たす
2020年1月、ファッションデザイナーのVirgil Ablohから招待を受け、パリ・ファッションウィークに参加した。これまでアメリカ国外に出たことがなかったというポップ・スモークは、母親の出身地であるジャマイカにも、父親の出身地であるパナマにも行ったことがなかった。パスポートすら持っていなかった。
ポップ・スモークのマネージャーであるShivam Pandyaは「彼はパリにいることにとても興奮していた。ずっと行きたかった場所で、初の海外だったから。着陸してすぐに街に着くと、彼は運転手にエッフェル塔に行くように言った。彼は車から降りて写真を撮りたがっていた」
フランスから帰国した2020年1月17日、ポップ・スモークはニューヨークのケネディ国際空港にて州境を越えて盗難車を輸送した罪でFBIに逮捕された。2019年12月3日には、ロサンゼルスで盗難届が出されたロールス・ロイスを所持していた罪でニューヨーク市警察に盗品所持で逮捕されていた。
空港で逮捕された翌日、ポップ・スモークは、キャリアに対する考え方を変えることになる人物50セントと面会した。ある意味、ポップ・スモークはこの瞬間のためにキャリアを築いていたのかもしれない。ポップ・スモークにとって、50セントはキャリアの可能性を象徴する存在だった。
50セントがポップ・スモークと初めて顔を合わせた時のことを振り返っている。
「少し奇妙な体験だった。オフィスで初めてポップ・スモークと話したとき、俺は彼の行動を見ていた。彼は電話ばかり見ていて同時にタイピングもしていた。『俺の話を聞いているのか?』と思った。俺は立ち上がってテーブルの反対側に行くと、彼は無関心だった訳ではなくて、俺が話したことをただ書き留めていたんだ。超真面目だよ。」
“The Last Days of Pop Smoke”,By Jon Caramanica,Published June 25, 2020,Updated July 9, 2020
50セント、ポップ・スモークにギャングとの関わりを忠告していた
Victor Victor WorldwideのCEOであるVictorは、50セントがポップ・スモークに忠告をしていたと明かしている。
「50はポップにこう言っていた『”POWER”(50セントが製作総指揮のドラマ)に出たいか?映画に出たいか?』って。後で50に聞いたんだけど、ポップのことを見定めていたみたいなんだ。『俺をからかってるのか?本当に俺のことが好きなのか?それが本音なのか、本当の行動なのか?キャラクターを演じているのか?』って。」
“The Last Days of Pop Smoke”,By Jon Caramanica,Published June 25, 2020,Updated July 9, 2020
それで50は、『ああ、この子は本当に俺に似ているな』と気付くんだ。50はポップに誘導尋問をしポップが受け応えていた。50は『銃は全部、今すぐ止めた方がいい。俺も分かってる。キミが生きている人生と周りの仲間のために必要なことだとは理解している。でも、そんなことはダメだ。なぜなら、彼らはキミが悪事をすることを待っているからだ。そして、キミの友達は本当の友達ではない。彼らもキミがヘマをすることを待っている。このままその道を進んで、刑務所行きになるか、死んでしまう可能性が高いか、それともコレだ。』ポップは 『コレって?』と尋ねた。50は答えた『俺は3000万枚のレコードを売って、リッチで映画にも出ている。誰にでも電話できる。何でもできる。これがキミにもできるかもしれない』と。ポップは50を目指して、自分もメガスターになれると気付いたんじゃないかと思う。」
“The Last Days of Pop Smoke”,By Jon Caramanica,Published June 25, 2020,Updated July 9, 2020
かつて9発の銃弾を受けても生き延びた50セントは、ギャングとの関わり方や自身の成功体験をポップ・スモークに伝えていたのだ。
50セントがポップ・スモークのデビューアルバムをプロデュース
2020年2月19日、カリフォルニア州ロサンゼルスの自宅でポップ・スモークが射殺された。警察はこの殺人事件について”狙いを絞った犯行”であったと説明した。
2020年3月1日、50セントがインスタグラムのタイムラインに、飛行機内で撮った写真を数枚投稿した。キャプションの中で、ポップ・スモークの楽曲を聴いていることを投稿した。ポップ・スモークが制作中であったデビューアルバムを完成させ、エグゼクティブプロデュースを行うつもりであることも認めた。
「移動中にポップ・スモークを聴いていて、彼のためにエグゼクティブ・プロデュースをしてアルバムを完成させようと決めた。」
50セントはこのプロジェクトに参加するアーティストをSNSにて募集し、キャプションの中でロディ・リッチにアルバムに参加してもらいたいと投稿した。2019 XXL Freshmanに選出されていたラッパーは、50セントからの要請を受け入れるのに時間はかからなかった。
50セントがエグゼクティブ・プロデュースを務めて完成した『Shoot for the Stars, Aim for the Moon』
Steven Victorは「アルバムを完成させる作業は、ストレスもあったけど同時にほっとするものでもあった。ポップがまだいるかのように感じたからね。レコードがリリースされた時、彼は本当にいなくなってしまう。」
50セントは「ポップに起きた出来事は、命がけで努力した時に起きてしまう事なんだ」とコメントを残した。
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