ルイヴィトンのクリエイティブディレクター“ヴァージル・アブロー”が残した軌跡

Fashion

2018年3月、ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)はキム・ジョーンズ(Kim Jones)の後任として、ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)のメンズ・アーティスティック・ディレクターに就任した。ヴァージルは、同ブランドの150年を超える歴史の中で、アフリカ系アメリカ人として初めてメンズウェア部門を率いることになった。

(左)ヴァージル・アブローと(右)キム・ジョーンズ

ルイ・ヴィトンでのランウェイ・デビュー

2018年6月、パリ・ファッションウィークで行われた“Louis Vuitton Men’s Spring-Summer 2019 Fashion Show”でデビューを飾った。映画「オズの魔法使い」(原題:Wizard of Oz)にインスピレーションを受けたコレクションを発表。虹のランウェイ、メタリックシルバーのポンチョや、「オズの魔法使い」の登場キャラクターのシルエットを前面に縫い付けたニットセーターなど、映画から引用したさまざまなアイテムをリリースした。

ヴァージル・アブローがルイ・ヴィトン・デビューに「オズの魔法使い」を取り上げた理由

「オズの魔法使い」は、1900年に発行されたアメリカの児童文学作品(おとぎ話)です。主人公のドロシーや旅の途中で出会う仲間たちが、願いや手に入れることが不可能と思えるものに憧れ、それを手に入れるためにオズ王国を目指して旅をするという物語。

グローバル化が進んでいるものの、有色人種のデザイナーがラグジュアリーブランドのディレクター職につくことは夢のようなおとぎ話である。

ヴァージル・アブローはルイ・ヴィトン初の黒人デザイナーであり、バルマン(Balmain)のクリエイティブディレクターを務めているオリヴィエ・ルスタン(Olivier Rousteing)と共に、フランスの伝統あるメゾンを率いる数少ない有色人種デザイナーである。

過去にはオズワルド・ボアテング(Ozwald Boateng)が、ジバンシー(Givenchy)のメンズウェア・クリエイティブ・ディレクターに就任。2005年6月に初コレクションを発表していた。

“Louis Vuitton Pre-FW19 Collection”

2019年2月、ルイ・ヴィトンはヴァージル・アブローが手掛ける“Louis Vuitton Pre-FW19 Collection”を発表した。このコレクションは日本や東京にインスピレーションを受けた作品となっている。ヴァージル・アブローは、スポーツウェアやストリートに寄ったこれまでのテイストから、洗練されたテーラリングと機能性を重視したレイヤリングピースを並べたコントラストの強いスタイリングに一新した。日本(東京)の公共サービスのユニフォームをモチーフとしたアイテムが登場している。

マーティン・ルーサー・キング牧師にインスパイアされたアイテム

マーティン・ルーサー・キング・ジュニア(通称:キング牧師)が残した数多くの名言を引用したアイテムを発表。ヴァージル・アブローはルイ・ヴィトンのメンズウェア・クリエイティブディレクターという立場を活かして、ブラックカルチャーと社会正義に焦点を当てたコレクションを制作した。

“Louis Vuitton Men’s Spring-Summer 2020 Fashion Show”

ヴァージル・アブローがルイ・ヴィトンのメンズ・アーティスティック・ディレクターに就任してから1年が経ち、2シーズン目となる“Louis Vuitton Men’s Spring-Summer 2020 Fashion Show”がパリ(仏)のドフィーヌ広場で開催された。

ルイ・ヴィトンは、ヴァージルが確立した美的コードにストリートウェアを超越することを委ねた。このコレクションを通して、ヴァージルはベーシックなアイテムを提案しつつ、従来のフォーマルなアイテムをオーバーサイズのカッティングと機能的なディテールでストリート寄りのアイテムに再構築している。ワークウェアやミリタリーウェアの要素が、ルイ・ヴィトンのスタイルにシームレスに織り込まれている。

“Louis Vuitton Spring Summer 2021 Menswear Show In Shanghai”

2020年8月6日、ルイ・ヴィトン 2021春夏メンズ・ファッションショーを上海にて開催。パリから上海、そして最後の目的地「東京」。まるで“航海”するようにコレクション全体が発表された。

Louis Vuitton Spring Summer 2021 Menswear Show In Shanghai

ショーの形式は、多様性、包括性、団結というヴァージル・アブローの基本的価値観を表現している。ヴァージルはルイ・ヴィトンのグローバル・コミュニティを受け入れ、世界各地でクライアントと向き合う。コレクションは“航海”を通じて文化や国を超えた進化する交流の中で変化していく。

ブラックカルチャーへのリスペクト

ヴァージル・アブローはショーで配布されたノートの中で、フランスのラグジュアリー・ブランドに勤める黒人男性として模範を示し、未来の世代のために扉を開けることを望む、と自身のマニフェストを述べている。

「これは、意識と希望と決意を持って、共に前進しようという私の呼びかけです。皆さんは、無条件でブラック・イマジネーションが発揮される場に立ち会っているのです」

“Louis Vuitton Spring Summer 2021 Menswear Show In Shanghai”

ガーナ国旗の色に敬意を表したこのショーは、主に黒人クリエイターとのコラボレーションで制作された。ヴァージル・アブローはガーナ系アフリカン・アメリカ人である。

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