かつてはJay-ZやLil Wayneらの超大物ラッパーから支持されていたEvisu。トラヴィス・スコットやリル・ウージー・ヴァートのような旬なラッパー達がエヴィスジーンズを履き始めると、エビスは再びトレンドになり始めた。
トラヴィス・スコットとエヴィスジーンズのコラボ “Cactus Jack x EVISU”や、EvisuがJay-Z、Lil Wayne、Lil Uzi Vertのお気に入りプレミアムデニムブランドになった経緯について深堀する。
トラヴィス・スコットとエヴィスのコラボ
2020年7月、”Cactus Jack x EVISU”のプロモショットが公開された。トラヴィス・スコット自身がチームアップのフルセットに身を包んでいる。
トラヴィスは、ホワイトデニムをベースに、マルチカラーのカモメのロゴとカクタスジャックのモチーフをあしらったポケットパッチでアクセントをつけた、カクタスジャック仕様のEVISUマルチポケット・ジーンズを着用している。ジーンズのディテールは、ゴールドトーンのリベットと明るいブラウンのステッチ。お揃いのシャツジャケットもテーマを引き継いでいるが、胸元のフラップポケットにはブラウンのペイズリー柄があしらわれている。
日本でのデニム文化の成り立ち
アメリカン・デニムが日本でヒットしたのは1950年代のことだ。しかし、Levi’sやWranglersは日本人男性の体型に合わなかったため、仕立て屋はジーンズを裁断し日本人の体型用に作り直した。 1970年代には広く成功を収めたものの、需要が高まるにつれてアメリカン・デニムの品質は低下していった。何人かの日本人デザイナーは、低級な素材に嫌気がさし、手染めの工程、ヴィンテージの機械、何世紀も続く労働集約的な織り方など、日本流のデニムの復活を目指した。
ステュディオ・ダ・ルチザン(STUDIO D’ARTISAN)、Denime、FULLCOUNT(フルカウント)、Warehouse(ウエアハウス)といったブランドが1980年代初頭から1990年代にかけて登場し、その品質と特別なディテールで知られるようになった。しかし、1990年代初頭に山根英彦がシーンに登場するまでは、世界中の人々が日本のデニムに注目することはなかった。山根がそれを実現したのが、自身のブランド「エビス」である。
Evisuの立ち上げ
レーベルを設立する前、山根はヴィンテージデニムの研究に時間を費やし、完璧な生成りの丈夫なジーンズを作るべく探求を続けた。後に自身のデニムブランド「フルカウント」を立ち上げる辻田幹晴とともに、山根は仕立て屋の仕事を辞め、1991年に「エビス」を立ち上げた。
釣竿を持つ日本の商売繁盛の神様「恵比寿」にちなみ、山根は釣りとお金という2つの好きなものに感謝して、この名前を慎重に選んだ。
大阪で最初の店舗を立ち上げてから7年後、山根はレディースライン「エビス ドンナ」を発表した。それから間もなくの2000年代初頭、山根はさらなるステップアップを目指し、香港を拠点とする起業家ピーター・カプロー(Peter Caplowe)との提携を強化。後にアジアで「ハブ」と呼ばれるファッション見本市を立ち上げるピーター・カプローは、山根のユニークで派手なジーンズをロンドンやニューヨークのクールキッズに販売する手助けをした。
これが、日本のデニムブランドとしては初となる、エビスのメインストリームでの成功の始まりだった。山根の影響力は拡大し続け、ストリートウェアの世界にまで波及し、ジェイ・Zやリル・ウェインのような著名なラッパーたちから支持を得た。
ヒップホップシーンから支持されたEvisu
ジェイ・Zの “Show You How”、T.I.の “ASAP”、リル・ウェインの “Lock and Load”など、当時のヒップホップシーンで人気を集めていたラッパー達の曲にEvisuブランドの名前が出てきた。
How you want it, my jeans is 300
“Show You How”,Produced By Just Blaze,Written By Just Blaze & JAY-Z,Copyright ©Roc-A-Fella Records,Release Date November 12, 2002
(さぁどうする、俺のジーンズは300ドルだ)
These ain’t Diesel, nigga, these is Evisu
(Dieselなんかじゃないぜ、コイツはEvisuだ)
Seen on the scene white tees and Evisu
“ASAP”,Produced By Sanchez Holmes,Written By T.I. & Sanchez Holmes,Copyright ©Atlantic Records,Release Date November 30, 2004
(シーンで見かけたのは白いTシャツとエビスのジーンズだ)
Little red handkerchief hangin’ out the right side
“Lock and Load”,Featuring Kurupt,Produced By T-Mix & Batman The Producer,Written By Lil Wayne, Kurupt, Birdman & T-Mix,Release Date December 6, 2005
(小さな赤いハンカチを右側のバックポケットにぶらさげて)
Back pocket jeans fallin’, cover my Evisu sign
(ジーンズが落ちて、Evisuのサインを隠している)
Yep, we do shine and they gon’ hate
(Yep,俺達は輝いて、奴らは憎んでる)
スウェットバンド、オーバーサイズのTシャツ、そしてスウェットのセットアップが主流として君臨していたヒップホップファッションにおいて、エヴィスは新しい時代の一部となった。ヒップホップの曲でブランドが言及されることは大きな影響があり、エビスにとってはデニムブランドとしての地位を確立する一助となった。
Pumaとのコラボレーション
エヴィスの最初のブランド提携は、2002年のプーマとのコラボレーションだった。両ブランドは2002 日韓ワールドカップ開催を記念して、1シーズンに100種類のデザインを展開する”The EVISU Shoos Collection”を立ち上げた。
現代ヒップホップシーンでのEvisu
リル・ウージー・ヴァートのような人気ラッパーが”カモメ”ブランドのジーンズを履いているのが目撃されており、最近ではトラヴィス・スコットとのコラボがインスタグラムで発表された。ヒューストンのラッパーであるトラヴィス・スコットはこのブランドの長年のファンで、NBAの試合でもこのジーンズを着用し、最近ではクロエ・カーダシアン(Khloé Alexandra Kardashian)の誕生日パーティーでコラボを予告していた。
日本のウェブサイトから注文するか、日本国内の正規店で購入するのが、最高品質のエヴィスジーンズを手に入れる唯一の方法だと言われている。海外のオンラインストアで販売されている商品の大半は中国生産のエヴィスジーンズである。
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