ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)の経歴【Off-White、LVMH、Nike】

Fashion

ヴァージル・アブロー(1980年9月30日~2021年11月28日)
ガーナ系アメリカ人のファッションデザイナー。2013年にストリートブランド『オフホワイト』(Off-White)をイタリア・ミラノに設立した。

2018年からルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)のメンズウェアコレクションのアーティスティック・ディレクターを務めた。2021年、モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH)はアブローが設立したオフホワイトの株式60%を取得。この取引と同時にアブローはLVMHブランド全体のクリエイティブな役割と権限を与えられた。LVMHが展開している『ワイン・スピリッツ事業』(LVMHはKrug (クリュッグ)、Dom Pérignon (ドン・ペリニヨン)、Hennessy (ヘネシー)など30ブランドを所有)や『ホスピタリティ事業』(ベニスのチプリアーニやオックスフォードシャーのル・マノワール・オ・カッツセゾンなど50以上のホテル)などのファッション以外のカテゴリーにも幅広い権限が与えられた。

イリノイ工科大学大学院にて建築学を専攻していたアブローは、シカゴのストリートファッションでも活躍した。2009年には、イタリアを代表する世界的ファッションブランドであるフェンディ(Fendi)のインターンシップにラッパーのカニエ・ウェスト(Kanye West)とともに参加。インターナショナル・ファッションの世界に踏み込んだ。

その後、アブローとカニエはアーティスティックなコラボレーションを開始し、アブローはオフホワイトを設立させることになる。また、アフリカ系アメリカ人として初めてフランスのラグジュアリーブランドでアーティスティックディレクターを務めた。アブローはタイム誌の『2018年に世界で最も影響力のある100人』に選ばれている。 ハイプビースト・カルチャーとラグジュアリーの架け橋となったアブローのデザインは、ニューヨークタイムズに変革的と評された。デザイナーとしては珍しくウォールストリートジャーナルによる世界的名声を獲得し、BBCはインスピレーションを与える人物としてアブローを評した。

ヴァージル・アブローの生い立ち

ヴァージル・アブローはガーナ移民の両親のもとイリノイ州ロックフォードで生まれた。 母親は裁縫師で父親は塗装会社を経営していた。裁縫の技術は母親から習ったと語っている。アブローはロックフォードで育ち、ボイランカトリック高校(Boylan Catholic High School)に通い1998年に卒業した。2002年にはウィスコンシン大学マディソン校(University of Wisconsin–Madison)を卒業し、土木工学の理学士号を取得している。また、2006年にイリノイ工科大学(IIT)で建築の修士号を取得した。アブローがIITに通っていたとき、プラダの美術館を設計した建築家レム・コールハース(Rem Koolhaas)設計の建物がキャンパスにありファッションへ興味を持ち始めた。

建築を学ぶ傍ら、アブローはTシャツをデザインし“TheBrilliance.com”にファッションとデザインに関する記事を投稿していた。アブローが、シカゴのプリントショップでデザインに取り組んでいる時期に、人気ラッパーのカニエ・ウェスト(Kanye West)と出会う。

2009年、フェンディのインターン生に

大学院修了後、ラッパーのカニエ・ウェストと共にイタリアのファッションブランド「フェンディ」のインターンに申し込む。イタリアのローマにあるフェンディのオフィスに配属された2人は協力関係を築くようになる。インターン活動中に、アブローはフェンディのCEOマイケル・バーク(Michael Burke)の目に留まる。マイケル・バーグは2012年にルイ・ヴィトンの会長兼CEOに就任。

フェンディのインターンに参加したヴァージル・アブローとカニエ・ウェスト

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2009年末、アブローとカニエのアート仲間であるドンC(Don C)が、シカゴに“RSVP Gallery”という小売店を立ち上げた。この店のデザインにアブローのスタイルが反映されていることで認知されるようになった。
2010年、カニエ・ウェストが自身のクリエイティブエージェンシー“Donda”のディレクターにアブローを任命した。
2011年、アブローはカニエとジェイ・Zの共作アルバム“Watch the Throne”のアーティスティック・ディレクターを務めた。
2012年、アブローはキッド・カディ(Kid Cudi)とドット・ダ・ジーニアス(Dot Da Genius)のロックユニット“WZRD”のデビュー作のカバーアートをデザインした。同年、アブローにとって最初の会社“Pyrex Vision”を立ち上げた。ラルフローレンからデッドストックの服を40ドルで購入し、それにスクリーン印刷した服を550ドル以上の価格で販売した。営利企業として存続させるつもりはなく、芸術的な実験にするつもりだったため1年後には会社を廃業させた。

2013年、Off-White設立

アブローは、ベン・ケリー(Ben Kelly)にインスパイアされたロゴをデザインし、ハイエンドストリートウェアブランド“Off-White”を自身初の高級ファッション・ブランドとして設立。ブランド立ち上げの際に“New Guards Group”から支援を受けている。オフホワイトの最初のコレクションはドイツ出身の建築家ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ(Ludwig Mies van der Rohe)のガラス住宅『ファンズワース邸』に触発されており、バロック芸術家ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオ(Michelangelo Merisi da Caravaggio)と20世紀初期のドイツのデザインスタジオ『バウハウス』をデザインしたアイテムをリリースした。 ブランドの展開はパリから始まり、中国、日本、米国へと拡大させた。

2014年、オフホワイトの女性ファッション・ラインを立ち上げ、コレクションをパリファッションウィークで発表した。LVMH賞の最終選考に選ばれたが、『マルケス・アルメイダ』(Marques’Almeida)と『ジャックムス』(Jacquemus)に敗れた。
アブローはオフホワイト初のコンセプトストアを東京で立ち上げ、家具アイテムのサブブランド“Grey Area”をスタートさせた。

OFF-WHITE™ TOKYO“SOMETHING & ASSOCIATES”

2017年、アブローは“The Ten”と題したナイキ(Nike)の新しいコレクションデザインの依頼を受けた。ナイキを象徴するスニーカーをワークインプログレススタイルで再現した。それぞれのシューレース周りにはセーフティタグがあしらわれている。

VIRGIL ABLOH × NIKE“THE TEN”

2018年末、売上とセンチメント分析をランキングに換算する“Lyst Index”によると、グッチ(Gucci)を抜いてオフホワイトが世界で「最もホット」なブランドとなる。

ルイ・ヴィトンのアーティスティック・ディレクターに就任

2018年3月25日、アブローはルイ・ヴィトンのメンズ・レディースウェアのアーティスティック・ディレクターに就任した。初めて同ブランドのメンズウェアラインを率いるアフリカ系の人物となった。また、フランスの大手ラグジュアリーブランドを率いる数少ない黒人デザイナーの1人となった。

この出来事に「気分が高まっている」と語ったアブローは、世界最大のラグジュアリーグループ「モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン」(LVMH)の傘下で仕事をするために、家族をパリに移住させる予定であると語った。

「ラグジュアリーの最高峰ブランドで、デザインとラグジュアリーの次の章を考え抜くこの機会は、常に私の夢や目標だった。そして、このような立場にある人の外見が一定ではないということを若い世代に示すことは、幻想的でモダンな精神からスタートするということです」

Louis Vuitton Names Virgil Abloh as Its New Men’s Wear Designer By VANESSA FRIEDMAN and ELIZABETH PATONMARCH 26, 2018

ルイ・ヴィトンでのデビュー

ヴァージル・アブローはパレ=ロワイヤル庭園(仏・パリ)で開催された“Louis Vuitton Men’s Spring-Summer 2019 Fashion Show”にてルイ・ヴィトンのディレクターとして初のコレクションを発表した。

「どんなシナリオでも最初のコレクションの最大の目標は、人々が新しいボキャブラリーを理解できるようにすることだ」

V is for Virgil: Abloh makes debut for Louis Vuitton in Paris
“The vocabulary according to Virgil Abloh”
ファッションショー当日に配られたアブローのボキャブラリー集

バックステージには、アブローの両親が息子を祝福するために待っていた。パリを訪れるのは初めてで、「感動的な2日間だった」と語った。アブローの母は「クールになりなさい」とショーの前にアドバイスをした。

ショー終了後、カニエ・ウェストに向かって歩くヴァージル・アブロー

ヴァージル・アブローのルイ・ヴィトンを着用した最初の有名人はリアーナ(Rihanna)だと言われている。

オーバーサイズのブラウスとバギーパンツを身にまとったリアーナ

IKEAとのコラボレーション

2019年、ヴァージル・アブローはスウェーデンの家具会社イケア(IKEA)と提携しアパートや住宅用の家具をデザインした。中央に“SCULPTURE”と印字されたトートバッグもデザインしている。このコレクションはMarkerad(スウェーデン語で「明確なカット、鮮明な、発音」などの意味)と名付けられた。

“MARKERAD”IKEA x VIRGIL ABLOH

ヴァージル・アブロー、癌により死去

2019年、アブローはがんの一種である心臓血管肉腫と診断されていたが非公開にしていた。
2021年11月28日、シカゴで41歳の若さで亡くなった。家族の了承を得たLVMHは、11月30日にマイアミで予定していたファッションショーで「ヴァージルはここにいた」(Virgil was here)をテーマにアブローに賛辞を贈った。

カニエ・ウェスト、キム・カーダシアン・ウェスト、リアーナ、ASAPロッキーなどのミュージシャンや著名人がトリビュートに出席した。ルイ・ヴィトンは世界中のウィンドウディスプレイに“Virgil was here”という献辞を掲載した。

アブローの個人葬は2021年12月6日にシカゴで行われ、家族や親しい友人たち、ドレイク、リアーナ、カニエ・ウェスト、キム・カーダシアン、キッド・カディ、タイラー・ザ・クリエイター、ASAPロッキー、フランク・オーシャン、ヴィック・メンサ、ローリン・ヒル、ドンC、ジェリー・ロレンゾらが参列した。

REST IN PEACE VIRGIL ABLOH

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